日本菌学会の概要
はじめに
菌類とは,かび,酵母,きのこ,変形菌類などのことです.現在自然環境中に生息する菌類の種類は100万種以上と推定されており,途方もない数の未知の菌類が地球上に生息していると考えられます.そして菌類がもつ様々な遺伝子や生理活性物質は,21世紀のバイオテクノロジーの根幹をなす重要な資源として期待されています.また,地球生態系で菌類の果たしている役割の重要性がますます認識されてきました.共生や共進化という生物現象も菌類抜きに語れません.しかし,これら菌類を研究するためには特殊な技法を必要とし,加えてその分類・同定の作業は,専門家にとっても難しい問題が数多く残されています.
歴史と分野
日本菌学会は菌類に関する学際領域の研究推進と普及を目的として,1956年2月に創設され,65年を超える歴史をもつ学会です.現在,基礎から応用まで,生物学,植物病理学,微生物学,農芸化学,発酵工学,応用きのこ学,林学,医学,薬学,食品衛生学,環境科学などの各分野に関わる,約1000名の会員(名誉会員,終身会員,正会員,学生会員,賛助会員)が参加し,活動しております.
活動内容
本学会は毎年春には学術講演会・シンポジウム,秋には菌類の観察会・同定会などを開催し,また英文誌を年6回,和文誌を年2回,ニュースレターを年4回発行し,国内はもとより諸外国の菌類の専門家と学術交流をはかっております.また,菌類関係の主要国際会議に共催,あるいは協賛の形で参画するとともに,アジア・太平洋地域で開催される多くの国際会議・シンポジウムを主催しております.これらの国際会議には大学,国公立の試験研究機関の研究者や関係諸企業の学術・技術担当者も多数参加され,菌学の普及・情報の提供などの貢献を果たしてきました.
研究の推進と交流
本学会はこれまで取り扱ってきた菌類の分類学,農作物,家畜,魚類ならびに人体の病原菌の研究,医薬品資源としての生理活性物質探索などの基礎的研究に加えて,バイオテクノロジー分野における菌類の新規開発・利用菌類の収集保存,自然界での菌類の役割の正しい認識にもとづく生活環境の調和など,応用研究の推進にも力を入れ,その成果の社会還元を推進いたします.具体的には人材育成を目的とした若手研究者,技術習得希望者を対象とする菌学講習会,海外交流を推進するための外国菌学者の招請と国際集会の開催などの企画や会員を対象とした補助事業を進めております.