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一般社団法人 日本菌学会 - The Mycological Society of Japan

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Mycoscience 50巻2号 (2009年3月号) 掲載論文要旨

2009/03/26

Mycoscience 50巻2号 (2009年3月号) 掲載論文要旨
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論文: 日本産Geastrum属のフロラ研究: 3種の日本新産種,および今井三子により報告されたGeastrum minusの証拠標本の再検討

糟谷大河1), 山本幸憲2), 坂本晴雄3), 竹橋誠司4), 星野 保5,6), 小林孝人7)

1) 筑波大学生命環境科学研究科  〒305-8572 つくば市天王台1-1-1
2) 〒781-5102 高知市大津甲1010-53
3) 〒362-0052 上尾市中新井443-6
4) NPO法人北方菌類フォーラム  〒006-0041 札幌市手稲区金山1-3-10-3
5) 産業技術総合研究所ゲノムファクトリー研究部門  〒062-8517 札幌市豊平区月寒東2-17-2-1
6) 北海道大学大学院理学院  〒060-0810 札幌市北区北10条西8丁目
7) 北海道大学総合博物館  〒060-0810 札幌市北区北10条西8丁目

Geastrum berkeleyi (新称和名:イボヒメツチグリ),G. fornicatum (新称和名:タイコヒメツチグリ) とG. minimum (新称和名:スナジヒメツチグリ) を日本新産種として報告した.従来の報告では,G. fornicatumは不明瞭な孔縁盤を有すると記載されたが,日本産標本は,非常に明瞭で繊維状の孔縁盤を有する点で特徴づけられる.また,今井三子によりG. minusの学名で日本から初めて報告された菌の証拠標本を検討した結果,G. quadrifidum (和名:ヒメカンムリツチグリ) と再同定された.これら4種の肉眼的および顕微鏡的特徴を日本産標本に基づき記載,図示した.
Mycoscience 50 (2), 2009, pp. 84-93.
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論文: きのこ栽培における緑カビ病を引き起こすTrichoderma harzianum を特定するための特異的PCR検出

宮崎和弘1),土屋有紀2),奥田 徹2)

1) 森林総合研究所九州支所  〒862-0971 熊本県熊本市黒髪4-11-16
2) 玉川大学学術研究所  〒194-8610 東京都町田市玉川学園6-1-1

きのこ栽培における緑カビ病を引き起こすTrichoderma harzianum のPCR検出法の開発を試みた.T. harzianum菌株のITS領域の塩基配列情報から合計8種類のプライマー(フォワード用4種類,およびリバース用4種類)を合成した.G-THITS-F-2およびCAA-THITS-R3の組み合わせが最もT. harzianumの検出に適していた.適正アニーリング温度幅は64℃から67℃であった.微量試料からの検出を可能とするためのネステッドPCR法を検討したところ,一次増幅をTHITS-F1およびLR1-1,二次増幅をG-THITS-F-2およびCAA-THITS-R3の組み合わせで行うことで,テンプレートDNAの検出限界量を50fg (femto gram) まで下げることが出来た.この方法で,シイタケ菌床上におけるシイタケ菌とT. harzianumの境界領域からのT. harzianumの検出が可能であった.
Mycoscience 50 (2), 2009, pp. 94-99.
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論文: マダガスカルおよびウガンダの半乾燥地に生育する乾燥耐性植物モリンガのアーバスキュラー菌根菌の群集構造解析

大和政秀1),池田枝穂2),岩瀬剛二3)

1) ㈱環境総合テクノス環境部  〒541-0052 大阪市中央区安土町1-3-5
2) 林業科学技術振興所  〒612-0855 京都府伏見区桃山町永井久太郎68番地
3) 鳥取大学農学部附属菌類きのこ遺伝資源研究センター  〒680-8553 鳥取市湖山町南4-101

乾燥耐性植物モリンガ(Moringa)の根に共生するアーバスキュラー菌根(AM)菌の群集構造解析をマダガスカルとウガンダの半乾燥地において実施した.マダガスカルにおいてMoringa hildebrandtii 8個体とM. drouhardii 2個体を,ウガンダにおいてはM. oleifera 21個体を対象として,各個体から根を採取した.根から抽出したDNAに対して,プライマーNS31とAM1を用いたPCR法を適用し,AM菌由来のnSSU rDNAの部分配列を増幅した.PCR産物をクローニング後,制限酵素HinfIとRsaIを用いたRFLP解析を行い,代表サンプルについてDNAの塩基配列を得,データベース上の類似配列とともに近隣結合法による系統解析を行った.RFLP解析と系統解析の結果,Glomus intraradicesあるいはG. sinuosumに近縁なAM菌が多くのサンプルで検出された.モリンガの根において高頻度に検出されたこれらのAM菌は,半乾燥地に広く分布する菌種である可能性が示唆された.
Mycoscience 50 (2), 2009, pp. 100-105.
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論文: 日本で白色の結節を有するアワビHaliotis spp.から分離されたツユカビ類の新種,Halioticida noduliformans gen. et sp. nov.

村長保憲1),森本京子1),佐野文子2),西村和子2),畑井喜司雄1)

1) 日本獣医生命科学大学魚病学教室  〒180-8602 東京都武蔵野市境南町1-7-1
2) 千葉大学真菌医学研究センター  〒260-8673 千葉市中央区亥鼻1-8-1

ツユカビ類(卵菌類)に分類される菌がアワビの外套膜に形成された結節から分離された.分離された4株はHaliphthoros属と比較すると原形質の凝集が弱く長いフラグメントを形成すること,隣り合うフラグメントの空間が狭いこと,各遊走子のうから1~数本の放出管が形成されることから,Haliphthoros科に分類される新属新種 Halioticida noduliformansであると同定した.4株はLSU rDNAのD1/D2領域を用いた分子系統解析の結果,100-99.8%の高い塩基配列相同性を示し,かつ既知のいずれの亜綱にも含まれず,Haliphthoros属とHalocrusticida属と共に新たなクレードを形成した.また,このクレードの中では両属とは異なる独立したサブクレードを形成した.この結果は形態学的特徴から本菌をHaliphthoros科の新属新種とした結果を支持した.
Mycoscience 50 (2), 2009, pp. 106-115.
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論文: 木粉培地中に分泌するシイタケマンガンペルオキシダーゼlemnp2のクローニング

坂本裕一1),中出啓子1),永井 勝1)*,内宮博文2),佐藤利次1)

1) (財)岩手生物工学研究センター  〒024-0003 岩手県北上市成田22-174-4
2) 東京大学細胞生物学研究所  〒113-0032 東京都文京区弥生1-1-1
* 現所属: (財)環境科学技術研究所  〒039-3212 青森県上北郡六ヶ所村大字尾駮字家ノ前1-7

マンガンペルオキシダーゼ (MnP) は白色腐朽菌が分泌するリグニン分解酵素の一つであり,フェノール性化合物を酸化する活性を持つことから,バイオレメディエーションへの応用が期待されている.我々はシイタケ (Lentinula edodes) より新規のMnPをコードする遺伝子 (lemnp2) を単離した.lemnp2の推定アミノ酸配列はシイタケより単離されていたlemnp1の推定アミノ酸配列と48.8%の相同性を示した.lemnp2のcDNAは約1.4kbp,ゲノム配列は1.9kbpであり,両者の比較からイントロンは13個あることが明らかになった.lemnp2の上流領域には,CAAT, TATA,金属応答領域 (MRE) があることが明らかになった.LeMnP2は,10個のシステイン残基,Mn結合部位,Ca2+結合部位など,真菌類のMnPに保存されているモチーフを持つことが明らかになった.木粉培地で培養した菌糸体においてlemnp2が転写されており,培地中にLeMnP2が分泌されていることが明らかになった.培地中からMnPを精製したところ,精製された酵素はLeMnP2であることがLeMnP2抗体によるウェスタンブロット解析で明らかになった.以上のことから,シイタケが主に木粉培地中に分泌するMnPはLeMnP2であることが示された.
Mycoscience 50 (2), 2009, pp. 116-122.
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論文: 二極性きのこPholiota microspora (P. nameko) の形質転換系の開発

Ruirong Yi1),立川 敬2),石川真梨子2),向山博之2),持田裕介2),会見忠則2)

1) 鳥取大学大学院連合農学研究科  〒680-8553 鳥取市湖山町南4‐101
2) 鳥取大学農学部  〒680-8553 鳥取市湖山町南4‐101

コハク酸デヒドロゲナーゼのIP(iron-sulfur protein)サブユニット遺伝子 (sip) をPholiota microspora からクローニングし,点突然変異を導入してカルボキシン耐性遺伝子マーカーを作成した (pMBsip2 DNA).また,ハイグロマイシンフォスフォトランスフェラーゼ遺伝子 (hph) にsip のプロモーターおよびターミネーターを連結して,2つ目のマーカーを作成した(pMBhph1 DNA).これら二つのマーカーを用い形質転換を行ったところ,88.8 transformants/µg pMBsip2 DNA,122.4 transformants/µg pMBhph1 DNAと高い効率で形質転換が可能であった.サザンハイブリダイゼーションで遺伝子導入を確認したところ,変異型sip およびhph は,染色体DNAに1~数コピー挿入されていた.
Mycoscience 50 (2), 2009, pp. 123-129.
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論文: 18S rDNAを用いた全実性菌体を持つ陸生線虫寄生性卵菌Haptoglossa 属の分子系統

計屋昌輝,広瀬 大,徳増征二

筑波大学菅平高原実験センター  〒386-2204 長野県上田市菅平高原1278-294

線虫寄生性卵菌Haptoglossa 属菌7株において,18S rDNA塩基配列を明らかにし,卵菌綱における系統的な位置について調査を行った.解析には21株の卵菌綱生物および外群として卵菌綱と近縁な海生ストラメノパイル鞭毛虫2株とサカゲツボカビ綱生物2株を用いた.その結果,Haptoglossa 属菌は単系統群を形成し,Haptoglossa 属クレードは海生の褐藻類の全実性寄生菌であるEurychasma属菌とクレードを形成した.そして,Haptoglossa 属とEurychasma 属からなるクレードはその他の卵菌綱生物からなるクレードと姉妹群を形成した.これら2つのクレードはそれぞれ陸生と海生の卵菌綱生物の両方を含んでいた.これらのことから,Haptoglossa 属は卵菌綱の中で,独自に陸に適応したグループである可能性が示唆された.さらにHaptoglossa 属菌5種における18S rDNAとミトコンドリアのcox 2遺伝子の結合解析の結果,Haptoglossa 属クレードは不動胞子性のクレードと2つの遊走子性のクレードに分かれ,遊走子性のH. zoospora が他の2つのクレードの根本に位置することが明らかになった.このことから,不動胞子性の種は遊走子性の種から派生的に出現した可能性が示唆された.
Mycoscience 50 (2), 2009, pp. 130-136.
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短報: ウシグソヒトヨタケのpcc1遺伝子座における新たな変異対立遺伝子の同定

村田幸男,鎌田 堯

岡山大学大学院自然科学研究科  〒700-8530 岡山市津島中3-1-1

ウシグソヒトヨタケ (Coprinopsis cinerea) のpcc1遺伝子は,一つのHMGボックスをもつタンパク質をコードする.この遺伝子が変異すると,交配することなく,偽クランプをもつ菌糸を生じ,子実体を形成することが知られている.本研究では,新たに単離した,交配することなく偽クランプ形成及び子実体形成を示す6株,及び同様の表現型を示すことが以前に報告されていた2株,併せて8株について分析を行った.その結果,いずれの株においても,pcc1遺伝子内に,フレームシフト変異,ナンセンス変異,あるいはイントロン・スプライト・サイト変異をもつことが分かった.これらの結果は,pcc1遺伝子が,クランプ形成及び子実体形成を導く経路において鍵となる役割を演じていることを示唆している.
Mycoscience 50 (2), 2009, pp. 137-139.
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短報: 日本で発見されたウスムラサキフウセンタケCortinarius subalboviolaceus (Sericeocybe節) の新変種

宮内信之助1),宮内信芳2)

1) 長岡技術科学大学工学部生物系  〒940-2188 長岡市上富岡町1603-1
2) (社) 新潟県環境衛生中央研究所  〒940-2187 長岡市新産2-12-7

新潟県および群馬県の広葉樹林内で見つかったウスムラサキフウセンタケの新変種,Cortinarius subalboviolaceus var. niigatensis Miyauchi & N. Miyauchi(コシノウスムラサキフウセンタケ)を報告する.この新変種は広葉樹林に発生するC. subalboviolaceus var. subalboviolaceus(ウスムラサキフウセンタケ)に似ているが,子実体は色が少し濃く,より明瞭な紫色の色彩をおびること,また少し大型なことなどの点で区別できる.
Mycoscience 50 (2), 2009, pp. 140-142.
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資料: 外生菌根菌4種によるドロノキへの菌根合成試験

小長谷啓介,玉井 裕,矢島 崇,宮本敏澄

北海道大学大学院農学研究院  〒060-8589 札幌市北区北9条西9丁目

有珠山火山性撹乱地においてドロノキと外生菌根(ECM)を形成していた菌4種(ウラムラサキ,ワカフサタケ,イボタケ,ラシャタケ属菌)を用いて,ドロノキへの菌根合成試験を恒温室内で行った.土壌は火山性噴出堆積物を用いた.接種3ヵ月後にECMの形成頻度,形成率及び,苗高,各器官の乾燥重量を測定した.全ての接種区において,全個体で目的とした菌根形成が確認され,汚染菌によるECM形成は形成頻度,形成率とも非常に低い値を示していた.菌接種区は非接種区よりも苗高及び,植物体重量を大きく増加させていたが,菌種によってドロノキの成長に与えた影響は異なっていた.
Mycoscience 50 (2), 2009, pp. 143-145.

編集委員長:岡田 元