日時:2015年10月24日(土)~25日(日)
講演会・スライド発表会場:東京大学本郷キャンパス(理学部二号館223号室)
観察会・鑑定会場:東京大学大学院理学系研究科附属植物園(小石川植物園)
参加人数:52名
平成27年10月24日~25日に,東京都心に位置する東京大学本郷キャンパスおよび東京大学大学院理学系研究科附属植物園(小石川植物園)にて,第29回菌類観察会を開催しました。当日はおだやかな秋の日和の中,各地から幅広い年齢層の参加者が集まりました。
初日は東京大学本郷キャンパスの理学部二号館223号室において受付とオリエンテーションを行った後,東京大学の邑田 仁教授(小石川植物園長)による「小石川植物園の歴史と自然環境」,同じく東京大学の塚谷裕一教授による「ボルネオの森:キノコと腐生植物を中心に」と題した2題の講演が行われました。邑田先生には今回の観察会会場である小石川植物園の歴史,環境や植生の特徴について,豊富な写真とともに解説していただきました。塚谷先生には,ライフワークとされているボルネオ島の腐生植物やきのこの多様性について,美しい写真や動画とともにご紹介いただきました。
その後,3名の会員が日頃の活動成果を発表しました。稲葉重樹氏は「担子菌類菌株の分離と保存」と題し,野外で採集した子実体から菌株を調製・保存するまでの技術や裏話について紹介されました。山田宗樹氏は「Sirobasidium属の菌寄生について」と題し,Sirobasidium属をはじめとするシロキクラゲ類の生態や形態的特徴について紹介されました。また,中西布実子氏は「ラン菌根菌は内生バクテリアを保持するのか」と題し,ラン科植物の菌根菌とバクテリアとの生理・生態的関係について紹介されました。講演やスライド発表では活発な質疑応答や意見交換がなされ,その後は本郷キャンパス構内にあるレストランで懇親会となり,菌類談義で夜は更けていきました。
翌日はおだやかな天候のもと、小石川植物園内で観察会を行いました。小石川植物園は,その起源が約320年前の江戸時代にさかのぼる,日本で最も古い植物園であるだけでなく,世界でも有数の歴史を持つ植物園の一つです。園内には約4,000種の植物が植栽され,東京都心に広がる貴重な緑地であり,多様な菌類が観察できる環境となっています。また,小石川植物園は多くの新種・日本新産種の菌類の発見地にもなっており,日本の菌学史上でも重要な発見がなされている場所です。
折からの好天続きで園内は若干乾燥気味でしたが,ハツタケ,ハイイロカラチチタケ,ヒビワレシロハツ,ザラツキカタカワタケなどの外生菌根菌が観察できました。また,林内の腐植上にはヒナツチガキモドキなどの様々なヒメツチグリ属菌をはじめ,シラタマタケやツチナメコなどの腐生菌が見られました。さらに,セミノハリセンボンなどの昆虫寄生菌や,エノキうどんこ病菌などの植物寄生菌も採集されました。観察会の後,昼過ぎからは小石川植物園の本館にて鑑定会が行われました。48種の菌類を採集することができ,鑑定会場には参加者が採集した標本が一面に並びました。鑑定会は午後遅くまで続き,参加者は熱心に写真撮影や形態観察を行っていました。
最後になりましたが,今回の観察会開催に当たり,東京大学大学院理学系研究科附属植物園の邑田 仁教授,奥田 徹客員共同研究員ならびに同植物園の皆様には,園内での菌類採集をご許可いただいた上,講演会場や鑑定会場の確保等で大変お世話になりました。厚く御礼申し上げます。
第29回菌類観察会 採集標本リスト