第27回 菌類観察会報告

日時:2013年10月12日(土)~13日(日)
観察会会場:長野県南佐久郡小海町 松原湖周辺
宿泊:ファミリーロッジ 宮本屋
鑑定会場:小海町観光案内所
参加人数:31名(宿泊27名+当日参加4名)

 平成25年10月12日~13日に、八ヶ岳東側の山麓に位置する、長野県小海町の松原湖周辺にて第27回菌類観察会を開催しました。さわやかな澄みきった秋空のもと、幅広い年齢層の参加者が集まりました。宿泊場所は松原湖の湖畔にあり、シラカバやカラマツなどからなる湖畔林にも、多様な菌類が発生していました。このため初日の参加受付時には早くも、宿舎近隣で採集したきのこ類を持参された方も見られ、受付開始とともに、採集品を並べてきのこ談義が始まりました。

 懇親会では、松原湖周辺で採集された野生きのことともに、信州名物の馬刺しや佐久の鯉などの料理が次々と並び、信州の味覚を堪能しました。その後、スライド発表会に移り、3名の会員が日頃の活動成果を発表しました。筑波大学大学院生の安藤裕萌氏は、ご自身の博士課程での研究課題について発表されました。オフィオストマ様菌類の興味深い生態や系統関係について、参加者からも熱心に質問が飛び交いました。富山県中央植物園友の会の黒川悦子氏は、ヒメカバイロタケ属の形態的特徴について発表されました。特に、様々な針葉樹に発生するヒメカバイロタケ属菌の担子胞子について、形態的な変異に富むことを示されました。改めて、地道に標本を収集し、形態観察することの重要性を実感させられました。菌類懇話会の後藤康彦氏は、富士山周辺、関東地方及び福島県におけるきのこ類の放射性セシウムについて発表されました。福島第一原発の事故から2年以上が経過する中、生態系における放射性セシウムの挙動にはまだ不明な点も多く、特にきのこ類と放射性セシウムとの関係についても未解明の部分が多いことを再認識しました。スライド発表会の後は二次会へとなだれ込み、菌類談義で夜は更けていきました。

 翌日も好天に恵まれ、絶好の観察会日和となりました。観察会は2つのコースに分かれて行いました。それぞれ、カラマツ林やカラマツとシラカバの混生林等が主体のコースで、様々な環境下に分布する菌類を観察することができました。特に、秋のカラマツ林を特徴づけるハナイグチのほか、チャナメツムタケやキヌメリガサなどが数多く採集されました。観察会の後、昼過ぎからは小海町観光案内所の2階にある公民館の一室をお借りし、鑑定会が行われました。連日の晴天で林内は乾燥気味だったため、きのこ類の発生状況が心配されましたが、最終的には86種の菌類を採集することができ、鑑定会場には参加者が採集した標本が所狭しと並びました。鑑定会は午後遅くまで続き、参加者は熱心に写真撮影や形態観察を行っていました。

 なお、今回の観察会開催に当たり、ファミリーロッジ 宮本屋の皆様には、観察地への案内や鑑定会場の確保等、大変お世話になりました。厚く御礼申し上げます。

LinkIcon第27回菌類観察会 採集標本リスト