菌学関係書籍の書評(評者 栗原 祐子)1
そだててあそぼう37 土の絵本2 土のなかの生きものたち
日本土壌肥料学会 編・中村 真一郎 絵 AB判 36頁 社団法人農山漁村文化協会(農文協) 2002年発行 定価1,800円+税 ISBN 4-540-01009-3
一般的な菌類のイメージは風呂場のカビや食用キノコばかりで,その生態系における働きについてはあまり知られていない.そのような菌類の働きを分かりやすく解説した絵本が出版された.
本書は見開き1ページごとに以下のテーマを取り上げている:「1.落ち葉はどこへ?」,「2.森の落ち葉をめくってみよう」,「3.公園や林でキノコをみつけよう」,「4.植物,動物,微生物をぐるぐるまわる」,「5.ミミズを飼ってみよう」,「6.落ち葉とカブトムシ」,「7. 森の宝石オサムシ」,「8.小さな動物たちを観察しよう」,「9.みえない生きもの,微生物を培養しよう」,「10.土は生きている土の呼吸」,「11.ダイズと根粒菌」,「12. 植物とVA菌根菌」,「13.アカマツとマツタケ」,「14.植物に病気を起こすカビ」,「15. 病原菌やセンチュウを退治する微生物」.このうち真菌類やその機能に言及しているのは2,3,9,12,13,14,15の各章であり,4,10 章も菌類が関連する内容である.いずれの章にも楽しげなイラストと写真が多用され,文章も正確かつ分かりやすいように工夫されている.巻末には「もっとくわしい解説」が載っているが,この部分の漢字にも全てふりがなが振ってあり,子供にも読めるようになっている.
絵本だからといって侮れない,子供から大人まで楽しみながら学べる内容であり,1,890円出す価値は十分にある.あえて難点を挙げるとすれば,p. 8の「微生物」の絵がどうみても節足動物なことぐらいであろう.また,ついでに書かせてもらうと,p. 28~30のカビの絵が宮崎アニメのススワタリを極悪にしたような悪人面なのが菌学者としては至極残念である.そのような点はさておき,総合学習や理科教育の教材として,またキノコの観察会などでの説明用にもお薦めできる.
「そだててあそぼう」の「土の絵本」シリーズ(2003年に産経児童出版文化賞推薦賞受賞)には他に4冊がある.「1.土とあそぼう」,「3.作物をそだてる土」,「4. 土がつくる風景」,「5.環境をまもる土」であり,興味のある方は併せてご覧頂きたい.なお,編者の日本土壌肥料学会は土壌教育に熱心に取り組んでおり,土壌に関する実験方法をまとめた「土をどう教えるか―新たな環境教育教材」(古今書院;ISBN4-7722-5019-0)という本も出版している.土壌教育に興味がある方にはこちらもお薦めする.
(評者 栗原 祐子)