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一般社団法人 日本菌学会 - The Mycological Society of Japan

会長挨拶

日本菌学会会長 田中 千尋
日本菌学会会長
田中 千尋

一般社団法人日本菌学会2019~2020年度会長を仰せつかり,その重責を痛感しております.円滑な学会運営はもちろんのこと,同学の皆様方の共通の志である菌学の発展のため,微力ではありますが,精一杯務めさせていただきますので,何卒,会員の皆様のご支援とご協力をお願い申し上げます.

一般社団法人日本菌学会の前身である日本菌学会は,1956年2月20日に設立され,60年にわたり活動を続けてきました.社会的対応の必要からですが,2015~2016年度第31期山岡会長時代に日本菌学会の一般社団法人化へ向けての具体的対応が始まり,2016年12月一般社団法人日本菌学会設立後,2017年4月から,法人としての活動をスタートしております.今期2019~2020年度は,通算して第33期,社団法人としては第2期にあたります.法人化後初の大幅な役員交代でもあり,初めての経験で運営上工夫すべき点も明らかになってきました.法務顧問のアドバイスを得ながら,法人としてのコンプライアンスと円滑な運営の両立を図り,円滑な運営が代々続くようにするのが法人第2期代表理事としてのまず最初の仕事と存じております.

社団法人日本菌学会のミッションは法人の定款に定められております.それらは,①年次大会,菌類観察会,菌類講座などの各種集会を開催すること,②国際誌Mycoscienceならびに和文誌日本菌学会会報の刊行,およびニュースレターの発行などの活動を通して,菌学研究成果の発表,研究交流,学習の機会を提供すること,③日本産菌類データベース作成を通じて日本産菌類フローラに関する知見を広く世間に知らしめること,④菌学研究の発展に寄与した会員,寄与することが期待できる若手会員または研究業績の表彰,⑤会員の研究奨励を行うことです.また,これらを通じて菌学の発展や普及に貢献することが法人の設立目的となっています.これらの活動を運営,継続していくことが法人の理事・幹事に課せられた責務であり,一同,全力を尽くす所存でございます.また,法人の活動内容は定款に規定されていますが,その活動については時代のニーズや社会情勢に即したものでないと意味がありません.現在のところ,ニーズに即したものと考えておりますが,ぜひとも皆様方のご意見・ご要望を取り入れ,その時代時代にあった社団法人日本菌学会を運営出来ればと願っております.積極的なご意見を賜れればと存じます.

今期理事会は,前期からの継続事業でAMC2019 in Mie(2019年10月1日~4日開催)の開催に携わります.アジアの菌学者が中心ですが,それ以外の地域の著名な菌学者の参加も確定しております.若手,中堅の皆様にとっては今後の活動を広げる機会として活用していただければと存じます.また,併せて学生・若手研究者を対象とした参加費助成も行っておりますので,有資格者の皆様の奮ってのご応募お待ち申し上げております.

今期,新たに注力すべき課題としては,本会の菌学研究成果の発表の主要な場であり,また,対外的な顔でもある学術誌Mycoscienceならびに日本菌学会会報が関わる諸問題への対応を考えております.両誌の刊行は本会最大の事業でもありますが,学術誌を取り巻く環境はここ数年で目まぐるしく変わってきております.Mycoscience誌は諸先輩方のご努力によりWeb of Science, Scopus等のデータベースに抄録され,また,現在のところ海外からの投稿もあり,日本菌学会の英文誌としてだけでなく国際誌としても認識されるに至っております.しかし,守備範囲が似た新たな菌学誌の創刊や出版業界の急激な変化で,質の高い論文原稿の確保ならびに経費負担の2点が喫緊の課題となりつつあります.一方,日本菌学会会報の場合,アカデミアで研究業績として邦文学術論文が重視されない風潮からか学術論文原稿の慢性的な不足に悩む事態となっておりました.そこで,前期理事会では,日本菌学会会報を学術誌として維持するために,英文学術論文の掲載も認めるとの方針を決定いたしました.今期理事会では,日本菌学会会報(Japanese Journal of Mycology)をローカルトピックを中心とした菌学学術誌として再定義し,Mycoscienceを菌学総合誌としてより国際的な評価向上を目指すとの方針で対応を進めて参ります.また,公的資金によってなされた研究の成果はオープンアクセス化すべきとの米英における考えが,わが国にも波及しつつあり,研究者の研究成果公開先の意思決定だけでなく,学会等の学術出版事業にも多大なる影響を及ぼしてきています.本会の学術誌出版事業を取り巻く潮流を慎重に読み,先に述べた両誌のミッションの再定義はもちろんのこと,出版負担,出版様態あるいは他誌とどのように差別化し継続発展させるのかなどについても中長期的視点を持って検討を開始すべき時期が来たと認識しております.

文頭の挨拶で,私は「同学の皆様方の共通の志」との表現を用いました.学術団体として同学の志を一にして高みを目指すことは当然の事ですが,その活動を支えかつ次世代を育むのは同好の皆様方の共通の志であると考えております.私事で恐縮ですが,私が菌学を志す機会となったのが,大学2回生の時にクラブの先輩に連れられて関西菌類談話会の採集会に参加したことでした.同好の方々が集い,職業としてのプロ・アマではなく,各々が菌類のプロとして活き活きと活動していたことを昨日のことのように思い出します.私も,もっと「その道」を極めたいとの思いで日本菌学会に入会し,その後,大学院に進学しました.日本菌学会に入会して印象深かったのが,極めて多様な「その道」のプロがおられて,本当に親切に教えていただけた事です.特に,菌類採集会では,大勢の諸先輩方が皆様各自の菌類を対象に採集あるいは分離培養されており,書物でしか知らなかった菌類の実物あるいは分離作業等のノウハウを教えて頂き,その経験が自分の菌学者としての幅を拡げたと思っております.現在の微生物学研究では微生物そのものよりも微生物のメタ情報の利用が研究の中心となっている一面もあります.現実に微生物の実用的な同定や存在確認がDNAデータあるいは核酸分子の存在で行われるのが当たり前となり,これらの為に生物そのものの知識を特に必要としていません.しかし,基礎あるいは応用に関わらず,ある微生物に関わる学問を深化させるためにはその対象とする微生物の実体に関する知識が必要とされます.日本菌学会は微生物,中でも実体としての菌類を熟知するプロ集団であるといえます.日本の社会で少子化が進む中,会員減少を即席で解消する特効薬は見つかりませんが,日本菌学会のように「生き物志向」の団体においては,様々な経験を持った会員が菌類の面白さや実体験を地道に伝え,若い方々に同好の士となっていただくことが会員減少に対する妙薬だと考えております.今期理事会でも,このような機会をできるだけ増やし,会員の皆様が持つ知識経験を未来の同好の士に伝える活動を続けたいと考えています.会員の皆様方には,今後もこれまで同様に活発な活動を続けていただき,菌学あるいは菌学会の発展に貢献くださいますよう切にお願い申し上げる次第でございます.

2019年7月