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Mycoscience 49巻6号 (2008年12月号) 掲載論文要旨
2008/12/15
Mycoscience 49巻6号 (2008年12月号) 掲載論文要旨
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総説: Coelomycete systematics with special reference to Colletotrichum
Maung Mya Thaung
Natural History Museum of Los Angeles County, 900 Exposition Blvd, Los Angeles, CA 90007, USA
Morphologic and molecular data of coelomycetes are analyzed. Taxonomic tools and species concepts are explored. Bimodal systematics approach is emphasized. A comprehensive case study on Colletotrichum is included.
Mycoscience 49 (6), 2008, pp. 345-350.
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論文: DNAフィンガープリント分析を用いた日本におけるエノコログサいもち病菌の集団構造の解析
山頭亜紀子 1),祝 千尋 1),諸石雅彦 1),三坂将和 1),藤田佳克 2),平田健治 3),草場基章 1)
1) 佐賀大学農学部 〒840-8502 佐賀県佐賀市本庄町1番地
2) (独)農業・食品産業技術総合研究機構中央農業総合研究センター 〒305-8666 茨城県つくば市観音台3-1-1
3) 筑波大学大学院人間総合科学研究科 〒305-8572 茨城県つくば市天王台1-1-1
日本におけるエノコログサいもち病菌の集団構造を転移因子であるMGR586およびMAGGYをプローブとしたDNAフィンガープリント分析により調査した.日本の広域から採集された15菌株を供試したところ,どちらの転移因子をプローブとした分析によっても,各供試菌株はそれぞれ異なるハプロタイプに類別され,さらに,DNAフィンガープリントパターンの類縁度が70%以上の菌株組み合わせを同一リネージとした場合,15菌株は13のリネージに類別された.また,日本各地9地点について1 m2 あるいは 50 m2の局所から20~25菌株を採集し,MGR586をプローブとした分析に供試した.その結果,上記と同様に菌株をリネージに分けた場合,各集団には2つ以上のリネージが含まれることが明らかとなった.以上より,本菌の集団は極めて遺伝的に多様であり,局所においても複数のリネージより集団が構成されることが示唆された.
Mycoscience 49 (6), 2008, pp. 351-358.
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論文: タイ産植物内生性クロサイワイタケ科菌に関する研究:リボソームDNA 塩基配列による野外で子実体形成する腐生種との比較に基づいた内生菌の多様性と分類について
岡根 泉 1), Prasert Srikitikulchai 2), 外山香子 1),Thomas Laessoe 3),Somsak Sivichai 2),Nigel Hywel-Jones 2),中桐 昭 1),Wanchern Potacharoen 2), 鈴木健一朗 1)
1) NITE 生物遺伝資源センター (NBRC)
2) BIOTEC Culture Collection (BCC), National Center for Genetic Engineering and Biotechnology (BIOTEC), Thailand
3) Department of Biology, University of Copenhagen, Denmark
タイ産植物内生性クロサイワイタケ科菌(子嚢菌門)の多様性,分類および生態に関する研究を行った.本研究では,カオヤイ国立公園で採集された健全な生葉および腐朽した植物試料上の子嚢世代からクロサイワイタケ科菌類を分離した.これらに加えて,生きた植物組織由来の内生菌および子実体由来の腐生菌を含む既存のBCC株を選定した.すなわち,タイ産植物内生性クロサイワイタケ科菌類の多様性,分類および分解途上にある植物基質上での子実体形成に基づき報告された腐生種との関連性を明らかにするため計405株 (内生性株:273株,参考同定株を含む腐生性株: 132株)を対象に研究を行った.28SリボソームDNA D1/D2領域塩基配列に基づく分子解析の結果,21種のクロサイワイタケ科菌類が調査地における熱帯植物の生葉内に生息することが明らかとなった.また,すでに腐生菌として知られるいくつかの種が内生菌として生息する能力を有することが示唆された.さらに,腐生菌を含まず内生菌だけで構成されるいくつかのクレイドが見出され,それらのいくつかはDNAデータバンクに登録されているいずれの種の配列とも一致しなかった.
Mycoscience 49 (6), 2008, pp. 359-372.
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短報: 脂肪酸分析による各種イネ苗立枯病の化学分類学的特性
Seint San Aye,福田信二,松元 賢
九州大学熱帯農学研究センター 〒812-8581 福岡市東区箱崎6-10-1
イネ苗立枯病は育苗期に発生する重要病害であり,フザリウム属,ピシウム属,リゾプス属およびトリコデルマ属の菌種によって引き起こされる.改変MIDI法により各病原菌から菌体脂肪酸を抽出し,その菌体脂肪酸の特性について解析した.4日間の培養と1時間の鹸化により,より短時間で脂肪酸の抽出を行った結果,14種類の菌体脂肪酸が検出され,正準判断分析および主成分分析等の統計解析により,脂肪酸の質的・量的な形質はイネ立枯病を引き起こす病原菌の属レベルの類別に有効であった.脂肪酸分析による各種イネ立枯病菌の化学分類の可能性について検討した.
Mycoscience 49 (6), 2008, pp. 373-378.
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短報: Arbuscular and ectomycorrhizal colonizations of two Eucalyptus species in semi-arid Brazil
Marcela Claudia Pagano, Maria Rita Scotti
Institute of Biological Sciences, Federal University of Minas Gerais, Av. Antônio Carlos, 6627, Pampulha, CEP: 31270-901, Belo Horizonte, MG, Brazil
Our goal was to evaluate the mycorrhizal colonization, as well as the density of arbuscular mycorrhizal (AM) fungal spores in Eucalyptus camaldulensis and E. grandis monocultures at two years in the semi-arid of Brazil. Soil and root samples were collected in two consecutive years. Eucalyptus camaldulensis showed varied AM colonization level according to season of sampling, and Glomus was the dominant in the spore number. Eucalyptus grandis showed dominant ectomycorrhizal (ECM) colonization, and lower AM fungal spore densities. Overall results suggest that E. camaldulensis has both AM and ECM dependencies, whereas E. grandis is solely ECM dependent in the monocultures.
Mycoscience 49 (6), 2008, pp. 379-384.
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短報: アンモニア水溶液中で青緑色に染まる粘液をつけた縁シスチジアをもつナヨタケ属の新種Psathyrella turcosomarginata
帆足美伸
〒818-0117 福岡県太宰府市宰府1丁目3-21
福岡県で発見されたナヨタケ属の新種Psathyrella turcosomarginata カワセミイタチタケ(新称)を記載・図示する.本種は側シスチジアを欠くことと子実体の外観的特徴からSpintrigerae節に属し,かなり大形の子実体,傘縁部の顕著な溝線,アンモニア水溶液で青緑色に染まる粘液をつけた縁シスチジアをもつことで特徴づけられる.
Mycoscience 49 (6), 2008, pp. 385-387.
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短報: ラン科植物コオロギランの菌根菌の分離および同定
谷亀高広 1),大和政秀 2)
1) 高森町蘭植物園 〒399-3107 長野県下伊那郡高森町出原512-73
2) (株) 環境総合テクノス環境部 〒541-0052 大阪府中央区安土町1-3-5
ラン科植物コオロギラン (Stigmatodactylus sikokianus) のリゾームから分離培養した菌根菌について,rDNAのITS領域の塩基配列に基づく近隣結合法による系統解析を行ったところ,Sebacina属菌(担子菌門)に近縁な菌であると同定された.地理的に離れた箇所からのサンプリングであったにもかかわらず,分離菌株のDNA塩基配列すべてに高い相同性がみられ,コオロギランがこのグループの菌類との関係に高い特異性を持つ可能性が示唆された.Sebacina属菌は様々なタイプの菌根を形成することが知られており,ラン菌根では腐生性のものと,外生菌根を形成するものとが知られている.コオロギランの菌根菌は生育環境から腐生性をもつと考えられた.
Mycoscience 49 (6), 2008, pp. 388-391.
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短報: 日本産ササ・タケ生菌類 (8): 屋久島で発見されたPseudolachnella属の1新種について
佐藤玄樹 1),田中和明 1),細矢 剛 2)
1) 弘前大学農学生命科学部 〒036-8561 青森県弘前市文京町3番地
2) 国立科学博物館植物研究部 〒305-0005 茨城県つくば市天久保4-1-1
屋久島のメダケ類より採集された分生子果不完全菌をPseudolachnella属の新種 P. yakushimensisとして記載・図示した.本種は剛毛を有する黒色の分生子果と両端に2-4本の付属糸を有する円筒形・3隔壁の分生子で特徴付けられる.Pseudolachnella yakushimensisは3隔壁の分生子をもつ点でP. indicaとP. scolecosporaに類似するが,本種の分生子は後者2種よりも小型で付属糸数が多い点で異なる.
Mycoscience 49 (6), 2008, pp. 392-394.
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資料: サクラ類紅点病菌 Polystigma fluvumは Polystigmina pallescensアナモルフ(もしくはアンドロモルフ) をもつ
鈴木陽裕 1), 畠山 聡 2), 原田幸雄 3) , 田中和明 1)
1) 弘前大学農学生命科学部 〒036-8561 青森県弘前市文京町3
2) 〒569-0814 大阪府高槻市富田町1-29-3
3) 〒036-8225 青森県弘前市西が丘9-8
本邦産シウリザクラ (Prunus ssiori) の罹病葉より得たサクラ類紅点病菌Polystigma fulvumのアナモルフを,接種試験および野外調査によって初めて明らかにした.シンポジオ型の分生子形成細胞と細長い糸状分生子(80-120 μm)の特徴から,このアナモルフを Polystigmina pallescensと同定した.顕微鏡観察に基づいてPolystigmina世代を含む P. fulvumの形態的特徴を記載した.本種のPolystigmina世代はアナモルフではなく,おそらくは受精に関与するアンドロモルフ(精子世代)であると考えられた.接種試験および野外調査の結果から推定されるPolystigma fulvumの生活環を簡潔に示した.
Mycoscience 49 (6), 2008, pp. 395-398.
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資料: 日本産Tulostoma 属2新産種について
浅井郁夫,浅井淑子
〒333-0853 埼玉県川口市芝園町3-14-309
ハラタケ目ケシボウズタケ科の2種 Tulostoma adhaerensおよび T. fulvellumを,それぞれ静岡県産,滋賀県産の標本に基づいて形態学的特徴を記載し,日本新産種として報告した.また,T. adhaerensには頭部表面のまだら模様からアバタケシボウズタケと,T. fulvellumには担子胞子の形状よりタネミケシボウズタケと和名を新たに提唱した.
Mycoscience 49 (6), 2008, pp. 399-402.
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資料: 腐朽した木生シダに発生する盤菌類 (3) 日本新産のLachnum lanaricepsとLachnum oncospermatum
長尾英幸
School of Biological Sciences, Universiti Sains Malaysia,11800 Pulau Pinang, Malaysia
日本の南部において腐朽した木生シダCyatheaに発生する3種のシダ嗜好性の盤菌類が知られていた.日本新産2種を同定した.Lachnum lanaricepsは柄が中心性で円柱状,赤色またはざくろ色の樹脂状粒子を付着した淡黄色の毛を有する特徴がある.Lachnum oncospermatumは基準標本 Dasyscyphus oncospermatisと比較後,同定した.本種は褶曲した子嚢盤と分岐した柄で特徴づけられる.
Mycoscience 49 (6), 2008, pp. 403-406.