第38回 菌類観察会報告

日時:2024年10月12日(土)
日本大学生物資源科学部湘南キャンパス
観察会:藤沢演習林・しげまるの森・湘南キャンパス構内
同定会・講演会:10号館2階1023実験室
参加人数:26名

 2024年10月12日(土)、神奈川県藤沢市の日本大学生物資源科学部湘南キャンパスにて、日本菌学会関東支部の第38回菌類観察会を開催しました。神奈川県での開催は2021年の横浜市以来3年ぶり3回目です。

 本年度の観察会の開催地は、同キャンパスに隣接する藤沢演習林やキャンパス内の緑地(しげまるの森など)です。藤沢演習林は藤沢市中部に位置する約5 haの小規模な都市近郊林であり、谷戸地形に位置するクヌギやコナラを主とした広葉樹林地です。近年はナラ枯れの影響を強く受けた影響で、林内には多くの枯死木が残されています。面積はそれほど広くないながら、観察地内には小川が流れる湿地帯などもあり、変化に富む環境に応じた菌類が採集されました。

 参加者は実験室に集合してガイダンスを行った後、観察会に向かいました。観察会では対象区域内を自由に散策し、各々目的の菌類を探していました。演習林に入ってすぐの林縁部では、ウラムラサキシメジが美しく群生していました。コナラなどの菌根性樹種が生育する区域は乾燥気味であまり目立った菌類が観察されませんでしたが、ナラ枯れ枯死木上には多様な硬質菌が発生していました。また、大型菌類の発生が少なかったためか、普段の観察会では見過ごされそうな小型の子実体も多数採集されました。

 観察が終わった人は実験室に集合して採集した標本の観察と同定を行いました。一通りの採集品の同定が揃ったあたりで鑑定会を行いました。鑑定会では参加者の中から分類の専門家に依頼し、各自の専門分野の菌類について解説を行っていただきました。本年度は合計98種の菌類が同定されました。特筆すべき種としては、発光性を有するアミヒカリタケがナラ枯れの落枝上から採集され、実験室の一角で実際に発光していることが確認されました。また、神奈川県レッドデータブック2022において絶滅危惧II類に位置づけられるアカヒダカラカサタケや発生例が少ないコガネハナガサなどの希少な菌類が記録されました。

 鑑定会後は、佐橋憲生博士(日本大学)による講演会「樹木を枯らす菌類の話―絹皮病と南根腐病の研究から」が行われました。樹木に病害を生じる菌類に関するトピックを紹介していただき、きのこ以外の視点からも菌類の知見を深める貴重な機会となりました。今年度も参加者の皆様のご協力のおかげで、無事に閉幕を迎えることができました。ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。


LinkIcon第38回菌類観察会 採集標本リスト